第1話:運命の出逢い、俺、友達出来た! |
すっかり夏の日差しが肌を刺激し植物にとっては、
光合成の絶好のチャンスである、この血気盛んな晴れた午後。
その日全ての仕事(勉学)を終えた杉峰浩二(通称浩チャン)は、
いつものように学校を立ち去ろうとしていた。
‥‥彼に友達は居なかった。 いつも一人寂しくホームアローン。
が、しかし、その日はいつもに増してなま暖かい風が辺り一面に吹き荒れていた。
そして運命の歯車が回り出す。
「うづうぅぅ―――っっす!!」
誰だこいつ? そこにはトレンディーな頭の割にパンピーちっく服装(学生服じゃん)を
着こなした小柄な男が立っていた。 しかも浩二に熱い眼差しを送っているようである。
浩二は一見危なそうに見えるこの男を無視しようとしたが、
まだかまだかとソワソワとした感じで浩二の返答を期待に満ちた眼(まなこ)で、
覗かれてしまっては仕方がない。
「あの‥‥何?」
浩二がナチュラルテイストの口調を装いつつ何気なく言葉を漏らすと男の目が光った。
「う゛ぉおおお! 一緒にトレジャーしょうぜ! よーし、やってやる!」
はっきり言って意味不明。
だがしかし、そう意味不明で全く全然ピクリとも男の行動が理解できなかったが、
浩二の脳裏がトレジャーという言葉に刺激されていた。
止まらない浩二の知的好奇心、ノンストップ浩チャン! ごーごー浩チャン!
「よぉーし、何だか知らないが、それやろうぜぇええええ!!」
その時の浩二の笑顔は言葉にならない魂の叫びであったという。
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第2話:結成! トレジャーボーイズ |
いつものように道草をしながら下校する浩二。
しかし今日は一人じゃない、大好きなNHKのTV番組『ひとりでできるもん』を
毎週欠かさず見ていた浩二にとってそれは痛く切ない苦しい選択であったが、
この際、仕方がない。 今は『ひとりでできるもん』より青木だ!
「よしっ! それじゃあ早速名前決めようぜ!」
「名前って何さ?」
ナーイス浩チャン!
まるで計ったように正確で完璧なタイミングでのツッコミ!
「う゛ぁあああ! さすが浩チャンやってくれるぜ!
うん、いけるっ! これならいけるよっ!!」
爽やかな笑顔と共に親指を立てて見せる青木。
もはや彼の行動を理解しろという方が無理、さすがは青木、普通じゃない。
「そうそう、ところでトレジャーやろうってどういうこと!?」
「‥‥‥‥」
突如沈黙する青木、不安が募る浩チャン。
そして彼の口から出た言葉は?
「‥‥流石に若いな浩チャンは。 俺も若いけど‥‥」
近くにある土手に佇み遠くを眺める青木。
「そうか、やっぱ若いと何も出来ないもんな、
すまねえ青木、俺が若いばっかりに苦労かけて」
その場に崩れ落ち哀願する浩二に青木は優しい手を差し伸べる。
それは青春ドラマ真っ青の熱いソウルが木霊する一場面であった。
「‥‥若いっていいよな」
すでに前後の会話すら繋がらない二人のやりとり。
哀情抜け落ちないまま浩二は言葉を漏らした。
「トレジャーボーイズってのはどうかな?」
「‥‥」
「‥‥」
交差する二人の視線。
「いけるっ!! それだよ浩チャン、う゛ぉぉおおおっ!! やってやる!」
ここに学生バンドトレジャーボーイズ(仮)が誕生した。
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第3話:リベンジ・ザ・軽音! |
次の日、いつもと同じように退屈な学校生活に勤(いそ)しむ浩二。
それでも頭の中は夢うつつ、トゥルードリーム浩チャン!
‥‥放課後
いつもの様に青木が姿を現した。
「う゛ぁあああっっ!! 練習しようぜ練習っ! やろうぜぇえええ!」
しかし青木の叫びは瞬く間にへこみにへこんだ。 そりゃそうだ。
だってここには楽器がない。 楽器は軽音楽部(通称軽音)の奴らに、
全て抑えられているのだ。 というかそこでしか楽器は使われないのも事実!
でも彼らは気付かない、さすがは頭の出来が違う、我らが浩チャン!
因みに残っている楽器と言えばホイッスル!
サッカーなどでジャッジがよく手にしてる事でお馴染みのアレだ!
「やるか?」
静かな吐息で警戒されないように言葉を漏らす浩二、気が利いている。
「だな‥‥」
二人の目が合う。 既に心は一蓮托生まったなし!
「う゛ぁあああっっ! やろうぜリベンジ! リッベ――ジ!やってやる!」
軽音の奴らがいつどこで何時に俺達の活動の妨害をした(実際はしてない)
ことなんてどうでも良かった! そう彼らはただ理由が欲しかったのだ!
というか寧ろそれだけ!
「いくぜっ!」
青木のかけ声と共に無我夢中で走る浩チャン!目指すは軽音部!
勿論後ろにゃ青木がついてくる! 天下無敵の二人パーティだ!
軽く廊下(と階段)を走っただけで動悸息切れをする浩二と青木!
運動不足は否めない。 そして手に取るウナコーワS!
それが風邪薬ともしらない青木と浩二! 二人はいつも一緒さ。
「はぁーはぁーここが敵の本拠地か、いよいよ敵のボスと対決か‥‥」
青木は玉繭物語に填っていた。 勿論浩二も知らない事だ。
「オッケー俺は準備万端、ガソリン満タン!」
軽いギャグを飛ばしつつ笑顔で答える浩チャン。
「よし、それじゃー1,2の3で突入するぞ!」
「ああ、いつでもいいぜ」
「それじゃー1‥2‥の」
ガラガラ、バシィイイイッッ!!
けたたましくドアを開ける青木。
中は誰も居なかった。
「いけるっ! いけるよ浩チャンっっ!」
誰もいないとくればしめたもんだ、漁るわ漁るわ、関係ないものまで漁る青木!
彼らが部室を物色し終えて自分たちの居城に帰還した時、
手にはそこそこの楽器を持っていた。
そしてじっくりと手にいれた(盗んできた)楽器を眺める浩二と青木。
「カスタネットに息を吹きながらひくピアノらしきもの(名前が解らないらしい)と
タンバリンか‥‥」
暗澹(あんたん)装う浩二の気持ちはダーク中のダークでありダークリフレインであった。
「大丈夫! いけるよ浩チャン! だって俺達トレジャーボーイズ! やってやろうぜ!」
沈黙破り心が澄んでいく浩二、落ち込みも早いが立ち直りも早い。
「そうだなっ! こんな事で諦められないよなっ!
決めたんだもんな! バンド作って女の子にもてようって!!」
「ばっかやろ――っっ! よーし、その意気、その意気だぁ!」
「クールにいこうぜっっ!」
いつしか浩二の顔には燦然と輝く光が舞い戻ってきていた。
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第4話:活動開始で勘違い浮上! 改名トレンジャーボーイズ |
楽器を手に入れ意気揚々と練習に勤しむ浩チャン達。
彼らの横には知らぬ間に仲間に加わった磯蒔勝男ことカッちゃんの姿があった。
「いけるよカッちゃん! これならいけるっっ!!」
青木はカスタネットを無我夢中で叩きまくりながらも、
親指を立たせ余裕の表情を見せる。‥‥さすがだ。
「そうかな?」
浩二の一言がハイな雰囲気を一気にローな雰囲気へと急降下させた。
「何? 一体何がいいたいのさぁーっっ!!」
カッちゃんが叫ぶ。 それは魂の叫び。
「ヴォーカルさ」
冷静無比でちょっと甘酸っぱい思い出が沢山詰まったように言葉を発する浩ちゃん。
しかし浩ちゃんの不安は磯蒔の言葉で更なる絶頂を迎えることになり、
いわばエクスタシーチャージであった。
「俺、ヴォーカルなるっっ!」
透き通るようなカッちゃんの目、それは二人の心を動かすのに充分であった。
「よ――し、やろうぜっ! それでいこうぜっ!!」
些細な事でバカ騒ぎする3人。
その日からトレジャーボーイズは変わった。
何が変わったかと言うと名前が変わった。
新しい名前、それはトレンジャーボーイズ!
そう浩二と青木はトレジャーという言葉の意味を根底から勘違いしていた。
勿論その事にツッコミを入れたのはカッちゃん、流石頭の出来が違うキャリア組だ。
そうさ、だって俺たちゃトレンジャーボーイズ。
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次回予告:校長の甘い罠、突然ドタキャン大ピンチ!(製作未定) |
この話しはフィクションであり、登場する人物及び地名は空想のものです。
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